DAZNマネーがもたらすACL強化費 ~JリーグがACLで絶対に負けてはならない理由~

2017年、JリーグはDAZNと10年2100億という大型契約を結び巨額な収入を得る事になった。

全てのクラブに恩恵がある「均等分配金」が増えるのはもちろんだが、注目はなんといってもリーグ戦上位4チームに支給される「J1理念強化分配金」と呼ばれる賞金制度だ。

この「J1理念強化分配金」を中心とした賞金制度改革にJリーグの狙いと方向性が見えてくる。今回は少しこの話を掘り下げて考えてみたい。

 

均等分配金

2016年 2017年
JI 1億8000万円 3億5000万円
J2 8000万円 1億5000万円
J3 1500万円 3000万円

これがいわゆるどのクラブでも均等にもらえる分配金。

全てのカテゴリーでほぼ倍額となっている。

なかでもJ2チームが7000万円増えるのはかなり大きい。J1に向け勝負をかけて積極的に補強を進めるクラブも出てくるだろう。実際にレノファ山口の河村社長は歓迎の趣旨の発言をしている(2016年12月31日の中国新聞より)。

J1優勝賞金

2016年 2017年
1位 1億8000万円
(※チャンピオンシップ優勝+年間勝ち点1位の場合)
3億円
2位 8000万円
(※チャンピオンシップ準優勝+年間勝ち点2位の場合)
1億2000万円
3位 2000万円
(※年間勝ち点3位の場合)
6000万円

2016年の賞金制度はかなり複雑なので年間勝ち点そのままの順位で決着した場合と仮定して計算した。この比較表では除外したがステージ優勝すればさらに5000万円プラスされるという仕組みだった。

比べてみれば、それぞれの賞金額がアップしている事がわかる。

J1理念強化配分金

2016年 2017年(3年総額)
1位 なし(※) 15億5000万円
2位 なし 7億円
3位 なし 3億5000万円
4位 なし 1億8000万円

 (※全ての出場チームに遠征費のサポート制度はあった)

今回の賞金制度改革の目玉。

4位以上のチームには「J1理念強化分配金」としてが3年総額で支給されるというもの。これはACL(アジアチャンピオンリーグ)に出場するチームのための資金として割り当てられる。

この分配金は何のために使ったのかをチェックする仕組みとなっている。「強化費、トレーニング関連費、育成関連費などJリーグのレベルを上げるもの」との基準があるようだ。

この新たな賞金制度はJリーグが本気でACL対策に取り組んでいることの表れといってもいい。そしてこのACLでJリーグクラブの成否にこそ、Jリーグがコンテンツとして殻を抜け出せるかどうかがかかっているように思う。

「アジアで勝てない」というレッテル

周知のとおり、ここ数年ACLでJリーグチームは苦戦が続いている。昨年もラウンド16には2チーム進んだものの、いずれも1回戦で敗退。またしても「アジアで勝てないJリーグチーム」という印象を残してしまった。

この「アジアで勝てない」という結果が一般層に与える影響は大きい。

近年は代表チームもアジア予選で苦しんでいるが、サッカーにそれほど関心がない層はどこかに「アジアでは勝って当然」という意識がある。そんな人たちに「Jリーグを見てください」と言っても「アジアに勝てないJリーグでしょ?」と言われてしまうのがオチ。ACLに出場するチームは、否が応でもJリーグという看板を背負って戦わなくてはいけない。高齢化が進んでいるファンに新規客を取り込むためにも、ACLで結果を残すことは非常に重要と言える。

昨年末、CWC(クラブワールドカップ)で準優勝と言う結果を残した鹿島には、当然その期待がかかる。ただ、昨年同じようにCWC3位チームとしてACLに臨んだものの、GSすら突破できなかった広島を見ていると、CWCとACLは別物だと感じる。

語弊を恐れずに言うならCWCは華やかなお祭り、ACLはガチンコの闘いの舞台だ。その特性は全く違う。もっとも、鹿島には長年培われた勝負強さがクラブの根幹にあるので、ACLで結果を出してもらいたいと願っている。

そして鹿島をはじめとしたJリーグチームのACLの成否こそDAZNがJリーグというコンテンツを評価する基準となるのではないだろうか。10年2100億という巨額の資金は一度に払われるわけではない。「評価に値しない」と判断されれば今後の先行きが不透明なることだってあるだろう。

全てのジャンルはマニアが潰す

このように、DAZNがもたらす巨額の資金はJリーグを大きく変える可能性がある。正直言ってコンテンツとして頭打ちだったJリーグが殻を抜け出すチャンスを得ているといってもいいだろう。

これだけ変わろうとすれば、当然のように拒絶反応は起こる。特に放送形態が10年も慣れ親しんだスカパーからDAZNに変わるのだから様々な意見は出て当たり前だ。ただ、始まる前から「DAZNはクソ」「このままではJリーグは終わる」などといった既存ファンのDAZNネガティブキャンペーンにはいささか辟易する。

新日本プロレスの木谷オーナーはかつて「全てのジャンルはマニアが潰す」と言った。

この意味には諸説あるが、私は新規が取り込めずマニア向けにしか商売できないのであれば、コンテンツとしていずれ先細りとなっていくという意味だと捉えている。

2017年、大きく変わろうとするJリーグを取り巻く環境にこの言葉の意味をかみ締める。

Jリーグに”百年構想”という壮大な理念があるのであれば「一緒になって作っていく」という姿勢が、ファンにも必要なのではないだろうか。

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