優勝セールにおけるカープとサンフレッチェの違いを考える。

カープ、カープ、カープ広島、広島カープ。

この一週間、広島はカープに泣き、カープに笑い、カープに踊った。広島はまさにカープ狂想曲の真っ只中である。

かくいう私も優勝決定戦であった9月10日の巨人戦は、仕事が残っているのを放り投げて、早々に帰宅しカープの戦いをテレビ中継で見ていた。すっかりカープファンになってしまった嫁子供と一緒に優勝の瞬間を喜び、黒田の男泣きには思わずこちらも貰い泣きしてしまった。自分もいつも間にやらカープファンになってしまったのかもしれない。

正直に言ってしまえば、ほんの数年前まではカープから興味が無くなっていた時期もあったし、選手の名前と顔が一致しないことなんてザラにあった。しかし、元々は小学生のころには浩二や衣笠、慶彦や北別府の活躍に心躍らせたし、子供同士集まって遊ぶのは決まって野球だった。そんな下地があるので数年来野球に興味を失っていても、一度帰れば小さい頃のDNA、もっと言えば広島人としてのDNAが蘇ってくるのは必然だったのかもしれない。こうして今の自分が山本浩二、衣笠祥雄を語るように、今の子供たちは大人になって黒田博樹、新井貴浩の活躍を伝えていくのだろう。

25年も優勝から遠ざかっていたカープではあるが、ここ数年は優勝まではいかないものの、一時期の低迷からは明らかに脱していて、毎年それなりに期待できるシーズンを過ごしてきた。その低迷期から抜け出したカープのターニングポイントは、2007年の逆指名制度廃止と、2009年のマツダスタジアム建設であることは間違いない。逆指名制度廃止により現在のカープを支える選手たちを獲得し、新スタジアムを最大限に活用して資金力を増し、黒田、新井といった一度は出ていった選手を再び招くことが可能になった。理由無しにいきなり強くなったわけではない。

そして、カープには知らない人が行っても誰でも楽しめそうな雰囲気が備わっている。「楽しめる」ではなく「楽しめそう」な敷居の低さなのだ。そして若い女性を中心とした圧倒的なファン数でカープの楽しさがSNSで発信される。成功しないわけがないのである。そして今回、ビジネスとして成功したカープに、スポーツとしての結果がついてきた。いつまでも隆盛が続くほど甘くは無いだろうが、今年の勢いを見るとしばらくはカープブームが続きそうな気配である。

サンフレッチェのファンがカープ優勝セールに嫉妬している?

そんなカープの優勝が現実味を帯びてきた先月末、カープ優勝セールの話題において「25年も前の事だから優勝セールの仕方がわからない」とする新聞記事にサンフレッチェサポーターが嚙みついた。最初はサンフレッチェサポのtwitter上の軽い皮肉めいたネタ程度だと思っていた。しかし、徐々に話が大きくなっていき、しまいには「サンフレが不憫」「カープの優勝とサンフレッチェの優勝で何が違うのか教えてほしい」などと本気で憤慨する者が出てきてネットニュースにまで取り上げられてしまった。

カープとサンフレッチェのセールの違いとはいったい何なのか。そうすれば広島におけるカープとサンフレッチェの違いも見えてくるのではないかと思い少し考えてみたいと思う。ちなみに、自分は仕事の関係上「セールを企画する」立場にある。よってこれから書くのはあくまで、提供する側の論理である。

まず、ファンの絶対数が違うというのは間違いなくある。ただ、その絶対数の違いもあるが、実際に今回のカープのセールはサンフレッチェの優勝セールよりも企画しやすかった。

なぜカープの優勝セールは企画しやすかったのかというと

・25年ぶりの優勝でファンに飢餓感があること

・独走態勢で優勝はほぼ確定的であったこと

これが優勝セール企画段階での確定事項だ。特に、独走態勢で優勝が確定的だったというのはかなり大きい。なぜなら「優勝おめでとうセール」として安心して打ち出すことが出来るからだ。ここがサンフレッチェのセールと大きく違う。

サンフレッチェのセールが企画しにくい理由

・CS(チャンピオンシップ)の結果がどう転ぶかわからない。

・「4年で3回の優勝」で市民としては珍しくも無くなっている。

特にCSの結果次第では残念セールになる確率もあり、「感動ありがとうセール」や「激闘感謝セール」という何だかよく解らないモヤモヤしたフレーズのセールタイトルになり、インパクトが弱い。ただ、この点についてはJリーグの1クラブがどうにかできる問題でもなく、外部的な要因が大きい。

また、これは贅沢で残念な話だが、「あー、またサンフレッチェが優勝したのね」という感想もある。4年で3回も優勝するのがどれだけ大変なのかは解っているが、こう言った声があるのも事実である。実際に「サンフレッチェのセールをしても反応が無い」とはいう小売店の声を聞くこともあった。

そして今回のカープ優勝セールの結果はどうだったのか。

結論から言えば、自分の勤め先は優勝翌日の日曜日、ここ数年来で最高の客数を記録した。その客数は福袋目当てで一年で一番客数の多い元日をも上回る盛況ぶりであった。セール対象商品は普段の日曜日の倍以上売れ、売り上げも日曜日平均よりも1.5倍もの売上を記録した。さらに翌月曜日も平日にもかかわらず沢山の人がつめかけ、平日の通常売上の倍以上を売り上げた。まさにカープさまさまである。ちなみにセール内容は優勝特価で特別安いわけでもなく、レギュラーの売出し現行とほぼ一緒の内容である。それでも優勝セールを目的とした人たちには「カープ優勝」で気持ちが昂り、購買を促進させるのだろう。セール客はまるで正月の浮かれ気分のように笑顔で買っていったのだ。

「金になるコンテンツ」となるには

かつてのカープは球団創設の経緯からも、広島市民の希望の光、復興の証しであり、心の拠り所であった。しかし、その心の拠り所であるカープは、何度も経営危機があり、観客動員数が低迷していたことからもわかるように、自治体や経済界が損得勘定を抜ききに支えており、市民もたる募金に見られるように、みんなで支え合って残していくものという側面が大きかった。

しかし、時代は移り変わり、広島人にとってカープは心の拠り所であるだけではなく、人々に実益をもたらすモンスターコンテンツとなった。端的に言えば「カープは金になるコンテンツ」になったのだ。それは前述したマツダスタジアム抜きには語れない。ただ、勘違いしてはいけないのは「立地のいいところにスタジアムが建ったから優勝できたわけではない」ことだ。最初からカープは「都市圏に比べて人口の少ない広島でスタジアムを運営していくためには、ボールパーク型を建設して何度も足を運んでもらう」という明確なコンセプトのもとにスタジアムを建てた。そして、移転後しばらくして集客が落ちた時には、話題づくりや情報発信を欠かさずに行ってきた。人が集まるから周辺のインフラ整備も進む。街に賑わいをもたらし、さらに人が来てお金を落とすという好循環を生み出している。

残念ながら、サンフレッチェは今現在「金になるコンテンツ」とは言えない。そのことは現状としてクラブ、サポーターも受け入れる必要があるだろう。サンフレッチェ前社長の小谷野氏は「サンフレッチェと自治体、経済界はwin-winの関係であるべきだ」との考えと説いたという。そのwin-winの関係を築こうとするならば、サンフレッチェは自らの価値を上げるしかない。そして、それは一朝一夕に出来る話では無く、やれることを少しずつやらねば、話は終わってしまう。カープ優勝の際に公式が「優勝おめでとうございますの一言でも発信すればいいのに」とtwitterで話題になっていたが、全く同感だ。こんなものは無料の販促ツールのようなもので利用しない手はない。もちろんこのことですぐに効果が上がるわけではない。しかし、こういった細かい事の積み重ねが少しずつでも自らの価値を上げていくのだと思う。まだまだやることなどいくらでもあるはずただが…。と、いつもの愚痴になってしまったのでお開きとする。

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