佐藤寿人選手の移籍報道について思うこと

中国新聞に佐藤寿人選手が名古屋グランパスへ移籍を決意したとの記事が掲載された。覚悟はしていたので驚きはしない。だが今回の移籍に関し、広島のフロントが取った行動、言動には疑問を持たざるを得ない。ファンは報道によるところしかやり取りを把握できず、発せられたコメントから推測するしかないのが実情だ。それを差し引いてもサンフレッチェというクラブの根幹を揺るがす事態に対して、その重大さが感じられず全体的に「軽い」のが何より気に入らない。佐藤寿人とはサンフレッチェにとってそんなに軽い存在だったのだろうか。

何故こんなに早い決断に至ったのか

移籍報道のあと、彼が発してきたコメントは広島に対して最大限の敬意を払いながらも、「選手としてもう一度勝負したい」という想いが滲み出ていた。だが、ここまで早く決断するのは正直、意外だった。ファンに誠実である彼の性格からして、これから先に予定されているファンイベントの前に決断したかったというのもあるだろう。何よりファン・サポーターを大切にする彼らしさが感じられる。ただそういった思いとは別に、自分自身の為でもあったのではないかと推測する。心の中では移籍を決めておきながら、ファンとのふれあいで「お願いだから行かないでください」と言われ続けるのはあまりにも酷だ。自分であれば耐えられない。

 クラブと寿人のズレ

サンフレッチェはこれまで「去る者追わず」というスタンスを貫いてきた。それは過去の移籍事例を見ても明らかだ。今回寿人の移籍報道が明るみに出ても選手として「特別視しない」というクラブ側の考えはコメントを通じて伝わってきた。一方でフロントは”クラブの顔”としてピッチ内外での活躍を求めてきた。寿人は「功労者だから残ってくれというのは違う」と発言していたことからも、「選手として必要とされているか」を第一に考えていただろう。彼は過去に「クラブにいらないと言われれば別だが、生涯サンフレッチェにいたい」と発言してきた。クラブの求めるモノと選手の求めるモノは最初から最後までズレており、それを埋めるだけのクラブのビジョンを見せることが出来なかった。

「練習で良ければ試合で使う」と森保監督は寿人との面談で語ったと言う。普段から森保監督は発言しており、監督自身の信念に基づくものであろう。だがその発言に基づいて考えるなら、ホーム最終戦前の練習で寿人はウタカを上回るパフォーマンスを披露できたからスタメンに名を連ねたのだろうか。そしてその試合で得点を挙げながら、次節で出番がなかったのは練習で満足なパフォーマンスが出来なかったからなのだろうか。結果が求められるFWで得点を挙げながら、次の試合出場する事すらかなわなかった寿人の心中は察するに余りある。

軽い発言は全てにおいて礼を欠く

今回の中国新聞の報道について「何故決まっていないに報道するのか」と物申したい人も多数いるだろう。地元広島のテレビも相次いで報道したようだ。しかしこの事について責められるべきは、まだ正式発表があったわけでもないのに内容を明らかにしてしまったサンフレッチェのフロントだ。実際にサンフレッチェに移籍を伝える連絡はあったのだろう。だとしても、皆が注目している重要案件を簡単にメディアに喋ってしまう口の軽さには思わず閉口してしまう。 おまけに「気持ちよく送り出してあげたい」なんてどの口が言うのか。移籍先の名古屋は「細部はこれからだ」と言う。正式に決まったわけでもないならその時まで黙っておけばよい事だ。寿人の残留を最後まで願うサポーターの気持ちを考えた事があるのだろうか。このような軽い発言は選手本人、移籍先の名古屋、広島のサポーター全てにおいて礼を欠く。フロントが本当に残留してほしいと思っていたかどうかも疑わしくなってしまう。

戦術面だけではなく、誰もが知っている”佐藤寿人”がいなくなってしいまうことは集客面においても影響は計り知れない。「元ファンのくせに知ったようなこというんじゃねえよ」と思われるだろう。それでも我慢ならないから言わせてもらう。

サンフレッチェはどれだけお金を積んでも得られないものを、今まさに手放そうとしている。

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